Anat Cohen

アンジック・レコード、アナット・コーエン&オデッド・レヴィ=アリ・インタビュー

Q : お二人の長年のパートナーシップと、レーベル設立の経緯、そして現在までをお話下さい。

A : 私とオデッドは、テルアヴィヴのテルマ・ヤリン芸術高校の同級生で、共にジャズを学んだ長年の友人です。私は、1996年にバークリー音大の奨学金を授与されてボストンに拠点を移し、1999年からニューヨークで活動しています。

O : 私は、よりクラシカルな音楽を学びたかったので、同時期にボストンのニューイングランド音楽院に留学し、やはり卒業後ニューヨークにやって来ました。

Q : そして2005年アナットのデビュー作『Place & Time』で、アンジック・レーベルは始動したのですね。

A : 最初は、私や兄弟達のアルバムをリリースする、プライヴェート・レーベルとして始まったのですが、2007年頃から私たちの友人達のアルバムの録音も開始しました。そしてこの9月までで34作品をリリースします。多くのアルバムに私が参加しているので、私を入れないとレコーディングが出来ないと思われてるかもしれませんが、そんなことはありませんよ。(笑)

O : レーベルを立ち上げるに当たって、私がフィーチャーしたかったのは、90年代半ばにスモールスで演奏していたミュージシャン達です。ジェイソン・リンドナー(p,kb)や、ダニエル・フリードマン(ds)、イスラエル出身の、ベースのアヴィシャイ・コーエンやオマー・アヴィタル(b)らが中心にいました。1998年にインパルス/GRPからリリースされたコンピレーション・アルバム『ジャズ・アンダーグラウンド~ライヴ・アット・スモールス』に記録されているようなアーティスト達です。このようなニューヨーク・ジャズのカッティング・エッジなアルバムを制作するレーベルにしたいと、思っていました。

A : 私も当時、ボストンにからニューヨークに来ると、いつもスモールスにハング・アウトしていて、そして今の活動に繋がるアーティスト達との知遇を得たのです。

Q : 現代のニューヨーク・ジャズ・シーンでは欠かすの出来ないイスラエル出身のアーティストや、ユダヤ系アメリカ人のアーティストを、多くフィーチャーしているように見受けられますが。

O : 我々はユダヤ系ジャズのアジェンダは、大きくは意識していません。コーエン・ファミリーのほかに、90年代から注目していた若手ミュージシャンにイスラエル出身者、ユダヤ系がいたと言う事です。

Q : 現在、過渡期にあるレコーディング・ビジネスの中で、多くのインディ・レーベルが精力的にアルバムを制作しています。そのような状況の中でのアンジックのレーベル・ポリシーを、お聞かせください。

O : 我々は、アーティスティックに素晴らしく、また録音のクオリティもベストな作品なることを意識しています。現在のインターネット環境では、アーティストとリスナーの距離が、10年前とは比べものにならないくらい近くなったと思います。リスナーの声に耳を傾けつつ、妥協することなく自分たちの創りたい音楽を、制作し続けたく思っています。私はこれからの状況も、楽天的に考えています。

A : 今はFacebookとかを通じて、すぐにリスナーの反応が、アーティストに伝わります。現代の時代を反映しつつ、このような状況で創作をすることは、とてもチャレンジングで、面白く思っています。

Q : 2013年にかけてのリリース予定をお知らせ下さい。オデッドさん、あなた自身もアルバム『Noir』や、『Digging Me, Digging You』で、素晴らしいアレンジを聴かせてくれてますが、ご自身のリーダー・アルバムの制作のご予定は?

O : いよいよ来年ぐらいには、満を持してラージ・アンサンブル・アルバムをつくりたいと思っています。おそらくチェンバー・ストリングスもフィーチャーした作品になります。

Q : アンジック・レコードのディストリビューション状況を教えて下さい。

O : 私たちはアメリカを中心としたワールド・ワイドでは、サニー・サイド・レコードに販売を委託してます。日本では、サニー・サイドと契約しているキング・インターナショナルが、輸入を代行しています。ヨーロッパではフランスのナイーヴと契約をスタートしました。イスラエルでは、直接販売をしており、また世界中でiTunesを通じて、アンジックの諸作品を聴いていただけます。

Q : 日本のリスナーにメッセージをお願いします。

O : 日本を訪れたことはないのですが、日本製品や、日本の音楽の精緻な作りには、いつも驚かされています。より多くの日本の皆様に、我々の作品をぜひ聴いていただきたく思います。10月24日から、アンジックの主要アーティストである、オマー・アヴィタル(b)と、ジェイソン・リンドナー(p,kb)、ダニエル・フリードマン(ds)が、オマーのグループとして日本に遠征します。ぜひライヴで、我々のレーベルの音楽を体感してみて下さい。